コーナーキックから得点が生まれる可能性は2%しかない
はじめに
子供がサッカーを習っているので、色々と練習法などの本を読んでいるのですが、
「そもそもサッカーにおける「良いチーム」や「良い選手」って一体何?」
という根本的な疑問を常に持っていました。
野球の世界ではデータ分析がかなり進んでおり、MLBではどの球団も専属のデータ分析チームを持っているのが当たり前になってきています。
ところが、サッカーではそのような風潮はまだ主流ではありませんし、一般的にサッカーで目にするデータも、得失点とシュート数、ボール支配率くらいで野球に比べて圧倒的に少ないです。
そんな中、サッカーのデータ分析に関する数少ない本が出版されていました。
サッカーのデータ分析には広大な未踏の大地が残されているよ、というのが今回のお話。
要約
この本の中で著者は、サッカーにおけるいくつかの「常識」が全く的外れであることを証明しています。
得点直後に失点しやすいという考えは、サッカー界に数多ある神話の一つに過ぎない
プレミアリーグを対象にデータ分析したところ、むしろ逆に得点直後が最も失点しづらい時間帯だったそうです。
このような常識にとらわれない監督の代表格として、ジョゼ・モウリーニョを上げています。
モウリーニョによれば、コーナーキックに対する評価も的外れだそうで、
「コーナーキックがこれほどまでに拍手喝采を浴びる国が他にあるか?」
「どこにもない。コーナーがこれほど評価されているのはイングランドだけだ!」
と、半ば怒りを露わにしながら発言していたようです。
この考え方は、データ分析からも実際に正しい事が証明されています。
コーナーキックと得点の相関関係はほとんどゼロに近い。
つまり、コーナーキックの数を増やしても、ゴール数はほとんど増えない。
コーナーキックが実際のシュートにつながる可能性は20%程度
そして、そのシュートがゴールにつながる可能性は10%程度
つまり、コーナーキックから得点が生まれる可能性は2%程度
プレミアリーグのチームがコーナーから得点するのは、平均して10試合に1度
コーナーキックがシュートにつながらず、カウンターで逆襲されるリスクを考えれば、ショートコーナーでボールを維持する方が得策かもしれないとも提言しています。
また、モウリーニョと同じくインテリジェント・フットボールの体現者として、ロベルト・マルティネスの名を挙げています。
マルティネスの自宅の奥の部屋には、60インチのペンタッチ型テレビモニターとプロゾーン社のソフトウェアがインストールされたコンピューターが設置されている。
試合を終えて帰宅したマルティネスはすぐに、この「秘密基地」に閉じこもり、その日の試合の映像を何時間もかけて振り返る。
マルティネスが率いるチーム(10/11年シーズンのウィガン)は、オープンプレーからのゴールが少なく、カウンターからの得点が他チームの2倍、直接フリーキックからの得点は他チームの4倍にもなる。
このシーズン、ウィガンのシュートの平均距離は24mとプレミアリーグ最長(リーグ平均は17m)
コーナーキックからの攻撃は全く重視しておらず、シーズンで1点しかとっていない。
マルティネスは、正確なロングシュートと直接フリーキックを多用することで、守備の陣形を素早く回復することを意識している。
まとめ
要約に書いた以外にも、ロングボールの有効性や選手交代のタイミング(58分、73分、79分でそれぞれ交代するのがベストとしている)など内容は多岐にわたっていますが、根拠となるデータが偏っていたり少なかったりして、信頼性には少し疑問が残るように感じました。
結局のところ、著者も述べている通り、サッカーのデータ分析はまだ始まったばかりであり、多くの人が何が正解なのか探している最中のようです。
冒険心に富んだ人にとっては、「サッカーのデータ分析」には未踏の大地が数多く残されているやりがいのある分野と言えそうですね。